苦して登ったその先にあるもの

全国にある愛宕神社は、火の神を祀っており、古くから修験者の修行の場となっていたそうです。

ここ奥多摩の愛宕神社もまた、修行の場所として、急で険しい愛宕山の形に沿って、道がつくられています。

苦しんで向かう先にあるのは、自然の雄大さと眺望、そして自力で登りきったことの達成感と温まった身体。

五感と六感が研ぎすまされ、神社を正面に見据えた時、何を感じるか。

きっと言葉に表せないものが、昔から、現在も、多くの人々を惹き付けているのです。


神社裏 参道


登計トレイルから愛宕神社へ。

急な斜面をくねくねと、山の形をいじることなく、器用に階段が続きます。

人よりも自然を優先的につくられ、自然を祀る意図を感じられます。

急な階段を登るには、自分と向き合うことが必要になります。

足下をしっかり見て、一歩、一歩と、転ばないように歩きます。

大勢で歩いても、自然と無言になり、歩くことに集中します。

ひたすら自分との戦いです。

階段は当時の施工技術ではコンクリート階段にせざるを得なかったのだろうと思う反面、老朽化の懸念と無骨な印象などから、より魅力的な(登るのがわくわくするような)階段であっても良いだろうと思いました。

※写真はイメージです

愛宕神社 御堂


山頂にあり、眼下には奥多摩町が見渡せます。

写真はあえて神社。眺望は見にいって確かめてみてください。

現在ではいろんな人が無理なく参拝できるよう、駐車場から神社まで簡単に行くことができるそうですが、険しい道を歩いたことで自然と向き合い、良い汗をかき、心がより健やかになったような気がします。

ただし、山頂はひどく狭いため、参拝者が多いなか時間をかけて堪能するのは、少し気が引けるような気がして、とてももったいない感じ。

張り出すようなデッキがあっても良いのかなと思いました。








※写真はイメージです

平和の鐘と五重塔


参拝を終え、正面の参道を通ります。石段、木の根の段、山の要素を存分に満喫しつつ下りていくと、中腹に鐘と五重塔があります。

五重塔は戦没者奉祠靖国の塔、鐘は平和の鐘として町制施行40周年、戦後50年を記念してつくられたそうです。

ここで記念撮影と一休み。

夜は刻一刻と迫ってきていました。

正面参道 大階段


秋の日はつるべ落としといいますが、

あっという間に夜になっていました。皆ライトをつけて下りていきます。


ここで最後の難関、急傾斜の階段です。

ただでさえ急な階段です。段も外に傾いています。

真っ暗で、夜目をきかせて下りるしかありません。

真ん中の手すりにすがりつくように下りていきます。


正面の道も裏の道も、当時の合理的な施工技術が、

結果的に神社までの神聖な空間を演出するための要素となっているような気がしてなりません。


※写真はイメージです





 

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もったいないなと思うところを提案するにあたり、神秘の空間たらしめるデザインでなくてはと思う以外に、

昔からの光景を損ねることなく考える必要があるかと思います。

歴史の継承と宗教的意図を反映することができるよう、自然的で無駄のない、繊細で普遍的なデザインがここには必要だと思います。

Written by 高橋佳祐